この記事を読む前に
差し支えなければ、コチラの英単語学習についての記事をご一読ください。こちらを先に読まれると、より一層、効果が期待できます。
もちろん、自分なりの学習方法を確立しているのであれば、その限りではありません。ご参考までにどうぞ。
熟語学習も用例を読もう
英単語学習と同様、ここでの学習も「用例」が関わってきます。英単語学習の記事で「意味がたくさんあるのではなく、使い方がたくさんある」という話をしました。
要約すると、基本的に単語の意味は1つだけで、ある単語と別の単語が組み合わせられた時やその使用状況によって、言葉の意味が決まるという話でした。
熟語は、複数の語が組み合わせられた(慣用)表現なので、用例を眺めながら勉強することが効果的です。今回は “look” を扱った熟語(=句動詞)を例に、講義します:
- He didn’t bother to look at me.(彼は私には目もくれなかった)
- She looked around the room.(彼女は部屋を見渡した)
- He looked toward the western horizon.(彼は西の地平線の方角を見た)
- They looked away.(二人は互いに目をそらした)
- I looked through the papers.(書類全てにざっと目を通した)
- Please look after yourself.(ご自愛ください)
- I’m looking for a job.(仕事を探しています)
- Look out for bees.(ミツバチに注意して)
- Look up the word in your dictionary.(その語、辞書で調べてごらん)
- All the students look up to that teacher.(生徒みんながあの先生を尊敬している)
- We shouldn’t look down on other people.(他人を軽蔑すべきではない)
- Why not look into the matter yourself ?(ご自分でそのことを調べてみたらどう?)
とりあえず、思い付いたまま例を挙げてみました。意味さえ通じれば組み合わせは自由なので、他にも “look” 型の句動詞はあると思いますが、これらから考えてみましょう。
とはいえ、例文に目を通せば、筆者が言いたいことはすぐ分かると思います。「語の意味は1つ」という考え方を土台にすれば、せいぜい “look” には「見る」という意味しかありません。
そこに、場所や様態を表す語(主に前置詞や副詞)が組み合わせられることによって、様々な表現を生み出しているといえます。
例えば、6番の “after” を伴う文ですが、“after” は「~の後」を示す語です。
少々飛躍してしまいますが、英語で「お先にどうぞ」という場合は “After you.” といいます。これを直訳すれば「あなたの後で(行きます)」と表現します。
つまり、“Look after yourself.” というのは「後ろからついて回って自分自身を見ていてください」と直訳でき、これを敷衍して「お身体を大切に」や「ご自愛ください」や「自分自身のお世話をしてください」といった日本語訳ができる…という仕組みです。
単語の意味が急に変化するわけではありません(機会があれば、こういった記事も公開できればと考えています)
イディオム学習は「解釈」を大切に
上の例のように、直訳しながらの理解が容易な熟語もあれば、直訳してみても意味が分かりにくい熟語があります。
これはイディオムと呼ばれる類のもので、正直なところ、稀に筆者の手にすらも負えないものも出てきます。こちらは少し上級者向けの話になります。以下3つの例を見てみましょう。
- I’m an artist on the weekends, but being a tutor is my bread and butter.
(私は日曜画家ですが、個人教師が生計を支えています) - My friend is worried about taking his final but I’m cool as a cucumber.
(友人は期末テストを心配していますが、私はリラックスしています) - It shouldn’t be so hard for a smart cookie like you to learn English.
(キミみたいな優秀な人なら英語を学ぶのはそう難しいはずがないよね)
知っている単語同士の組み合わせではありますが、先程の “look” よりも遥かに難易度が上がったのではないでしょうか。
こういった類の熟語は、丸暗記学習を推奨しない筆者でさえも、とりあえず丸暗記学習になっても仕方がないと考えてしまいます。丸暗記学習をした後、英語が少しできるようになってから見えてくる「何か」があるからです。
これは、たくさんの英文や用例を読んでいく内に見えてくるのですが、そういう境地に至るには少しばかり時間がかかりますし、試験で得点さえできれば良いと考えている人にとっては、あまりやりたくない勉強だと思います。
したがって、こういったものは、正しいか正しくないかは置いておいて、自分なりの解釈を与えてしまうことが記憶に結びつきやすくなると思います。
というのも、イディオムの起源に関しては「諸説あり」のものも多く、翻訳家や研究者でさえも頭を悩ませるようなものだからです。
語法研究をするのであれば別ですが、一般的な英語使用者は、大きく意味さえ外さなければ、自分なりのルールを定めておけば問題ありません。要は使えるようになれば良いのです。
“bread and butter” は「パンやバターと同じくらい当たり前にあるもの」や「生活に必要なもの」という意味で使われています。
“cool as a cucumber” は「キュウリのようによく冷えている」という直訳ですので、タライに氷水で浸けられ、手足を伸ばしてリラックスしたキュウリでも想像してみればいいかもしれません。
元来も「キュウリの冷たさ」から来ています。しかし、”cool” の “c” と “cucumber” の “c” で韻を踏んでいることから語呂が良くなります。これを「頭韻」と呼ぶのですが、それで “cool as an ice” のような表現にはならなかったと考えられます。
最後の “cookie” ですが、これは俗語(スラング)で「人」や「奴」も意味しており、”a smart cookie” は、そのまま「頭のいい人」となります。
さて、イディオムについて見てきましたが、勉強する際の注意点があります。使うことに制限を与えているわけではないのですが、まだ英語に慣れていない人が難しい表現を使おうとすると、その部分だけが浮いてしまい、全体としての英文のバランスが悪くなってしまいます。
したがって、筆者は、英語イディオムやスラングに関しては、聞いた時に理解できるように準備だけしておき、よほど英語に熟達でもしない限りは、使わない方が無難だと考えています。
仮に勉強していなくても「それ、どういう意味ですか?」と聞き返せば、そこから会話も膨らむことでしょう。熱心に掘り下げれば面白い分野だと思いますが、それは語学を趣味にしている人や、研究者や教員を志望する人だけで良いかもしれません。
余談:「区切る場所」について
個人的に気にしている部分なので読み飛ばしていただいても構わないのですが、いわゆる慣用表現を丸暗記して使っている人には、ある特徴が表れていると感じています。”in order to” という表現を例に話したいと思います。
- She worked summers in order to save money for college.
『ランダムハウス英和大辞典(第二版)』小学館
どちらの文も「彼女は大学へ行く資金を貯めるために夏はいつも働いた」という和訳を当てるのですが、筆者は、この英文を声に出して読んだ時に “to” を境に区切る学習者が多いような印象を受けます。
“in order to” で熟語集に載っているため無理もないのですが、なんとなくギクシャクした英文に聞こえてきます。英語のリズムを考えた時、”in order” までが、直訳すると「まずは夏場ずっと働いた」までが意味のまとまりであり、その後で「大学へ行くためのお金を貯めるために」と続くからです。
これは、あくまでも筆者の抱く違和感なのですが、ひょっとすると、こういった意味のまとまりを意識するだけでも、いわゆる「外国人なまり」を矯正できるかもしれません。
もちろん「外国人なまり」が悪いという意味ではありません。むしろ、英語以外を日頃使ってコミュニケーションしている人に対して、わざわざ英語を使わせている人間の方が気を遣って我々に寄り添うべきなので、どんどん「外国人なまり」で英語を使えばいいと思います。
しかし、こういう微々たる部分も意識することで、英語は上手くなるはずです。どうせなら「同じ英語話者」と勘違いさせるほどの英語力を身に付けたいと思わないでしょうか。
「英語お上手ですね」などと言われると、私は悔しい気持ちになってしまうので、どうしても、こういう部分が気になってしまいます。皆さんは、どうお考えなのでしょうか。
基本は「単語学習」と同じ
熟語学習について眺めてきましたが、基本は「単語学習」と同じです。用例を確認すること、発音すること、反応速度を心がけること、そして最も大切なのが「気長に構えること」でした。この勉強のやり方を熟語学習でも意識して取り組んでください。