「とりあえず聞く」はNG
「リスニング学習の仕方が分かりません」や「リーディングはできるのにリスニングはできません」という人が後を絶ちません。これらは、筆者が受けたもので特に多かったと記憶しています。
学習内容を訊かないことには改善も提案もできないので「今どんな勉強をしていますか」と尋ねるのですが、返って来るのは決まって「とりあえず過去問をやっています」や「音を聞いていません」や「発音が分かりません」というものばかりでした。
きっと、この記事にたどり着いた読者にも心当たりがあるものと思います。
図星だったという人も、落ち込む必要はありません。音を使った学習は、外国語学習において最も大切であるはずなのですが、学年が上がるにつれて、最も軽視される傾向にあるからです。
授業では文字を読むことが学習の中心になっている学校(特に高等学校)が多い印象を受けるので、リスニング学習の方法を知らなくても当たり前だと思います。以下の項目を参考に、学習を進めてみましょう。
過去問を使うなら
過去問演習を否定しているわけではありません。ただ「なんとなく問題演習をこなす」という、問題集の使い方に難があります。
問題演習は、英文の大意をつかんで選択肢と照らし合わせる…という一連の作業であり「英文が聞けるか」よりも「正答できるか」の方に意識が向けられるためです。
大まかに聞けていればコミュニケーションは成立しますが、この能力は丁寧な学習を数こなすことで身に付く性質のものです。
要するに、過去問を使うにしても「英文を聞き取れるようになる」ことに意識を向ける必要があります。
必ず復習する
その使い方ですが、絶対に「復習」することです。以下に過去問演習(リスニング)の手順を箇条にするので、この流れを参考にしてみてください。
- 問題演習と自己採点
- 解答・解説のスクリプト(流れてきた英文)を読めるようになる。この時、分からない単語や熟語も隅々まで調べておく
- スクリプトを読みながら音を聞いて理解する(できる人は4~5から始めてOK)
- スクリプトを見ないで聞くだけで理解する
- 音読(シャドーイングなど)を取り入れる。この時、必ず英語の発音を心がける
リスニングを苦手とする人は、1番で学習が止まっている傾向にあります。徹底して数をこなしていくのも悪くありませんが、何度か同じ英文を使って学習すると効果的です。
音は瞬間的に消えていく性質のものです。一方、文字はその場を逃げません。第二言語として英語を学習している場合、文字が読めないのであれば、音で聞いても理解できるはずがありません。
不正解だったところは特に重点的に読む練習をしてみましょう。特に、マーカーで線を引いた項目は復習で最も大切なポイントです。
全て読めるようになったら、音を聞いて瞬時に理解する練習をします。文字を追いかけながら、書かれてある英文がどのように聞こえてくるのかを確認しましょう。
そして、それができるようになったら、何も見ないで聞いてみましょう。
全てできるようになったのであれば発音練習です。基本的に、自分が発音できる英語は、同時に、聞き取ることもできる英語です。英語の発音を意識して練習を重ねてください。
以上のように、試験問題を利用してリスニング学習をするのであれば、手順を考えて取り組むと良いです。
数日かそこらで完璧になるわけではありませんが、筆者の経験的に、続けていく内にできるようになってくるはずです。
日頃から「音」を取り入れる
上のような学習は、日頃から取り入れることができます。その学習法とは、常に「発音」を意識することです。
リスニングの訓練を始める時になって発音の勉強を始めていた皆さんであれば、その大変さが分かると思います。
英単語や英熟語の音が聞き取れないのに、文が聞き取れるようになれるはずがありません。
日頃の単語学習で、必ず音を聞いて反応する練習を心がけてください。詳細が気になる人は、英単語学習の記事を参考にしてみてください。
集中的に「音」を聞く
学習の仕方が分かったら、取り入れ方にも気を付けてみましょう。それは、外国語学習をするの中でもリスニング学習に特化させる時期を作ることです。
上で紹介した勉強方法は、やったりやならなかったりする日があると効果が期待できません。
一般的に、ある言語を習得するために必要な時間の目安は、3000時間前後であると言われています。
分かりやすく言うと、四六時中、集中的に目標言語に触れ続けて約4ヶ月なのですが、現代人は毎日数時間を工面するだけでも大変なので、実際には数年かかる計算になります。
日本国内で英語をできるようにしようと思ったら、意識的に時間を工面しなければならない困難もあります。
この「数年」をいかに小さくできるかが、外国語を習得できるかできないかの分水嶺となっています。
中高校生や社会人に関しては中々リスニング学習だけに時間を使うことが難しいかもしれませんが、これを読んでいるのが大学生であれば、長期休暇中を利用して意識的に音を聞きまくってください。
毎日数時間、本当に大変なのですが、上で紹介した学習だけに絞ってやってみてください。
外国語学習で苦しいのは、人生の長い時間のうちでこの部分だけです。慣れて来た頃には、新しい英語表現を取り入れるだけの学習に変化しているはずです。
自分の場合は3ヶ月~半年あたりでその実感が(ほんのりとですが)あったのを記憶しています。自身この辺りで試しにTOEFLを受検して、成績次第で交換留学などに申し込めばよかったかもしれません。
趣味的に勉強するだけで、そういうことに挑戦せず、ずっと日本に留まっているわけなのですが、当然ながら力を維持できておらず、今ではどんどん英語力が衰える一途を辿っています。
これは、あくまでも筆者がやってきた英語学習ですので、もちろん、もっと楽にできる学習があるのであれば、そちらに取り組んで欲しいです。そして、その成果のほどを(記事に反映させたいので)教えていただければと思います。
リーディング学習と一緒に
過去問以外を用いてリスニングの学習がしたければ、こちらのリーディング学習の記事を参考にしてみてください。
自分のお気に入りの本を探して取り組めば、少しは英語学習も楽しめるのではないでしょうか。原則、上のような手順を踏んでいれば何を使ってもリスニングは強化できます。
ディクテーションのススメ
ディクテーションとは、何も見ないで聞こえてきた音声を書き起こすことです。この学習はリスニングに留まらず、次回で詳説するライティングやスピーキングの学習にも繋がるので、ここで紹介しておきます。
筆者が、集中的に音を聞いていた時期に取り組んでいた学習方法になります。自分なりの教材の準備ができていることを前提に話します。
フレーズが記憶に残りやすい
この勉強の利点は、集中的に何度も同じ英文を聞くことにあります。何度も同じ英文を聞くからフレーズが頭に残りやすく、そのフレーズを利用してライティングに繋げられます。
また、そのフレーズを「音」で瞬間的に理解できるようになっているので、文字を読んでも瞬時に理解へと結び付けられます。音で理解できていれば(訓練次第ですが)スピーキングにも応用できます。
以上の観点から、本気で英語をなんとかしたいと相談してくる学生には、ディクテーションを薦めていました。
注意すること
- 文全体として聞き取ること
- 潔く次の英文に取り組むこと
- 発音練習を取り入れること
単語だけを聞き取ろうとせずに文全体として聞き取るように意識しましょう。あくまでも、流れてくる英文を理解するための学習なので、文レベルで全体を聞き取った後で音声を停止させて「なんて言っていたか」を書き取ることを心がけます。
また、多くても5回以上は聞かないようにしてください。何度聞いても分からない場合は、スクリプトを参照して、赤ペンなど別の色で書き取ります。
学習の初期段階では、文の最初の2~3語くらいに注意を取られてしまい、その後の音が全く聞こえて来ないはずです。
しかし、真っ赤になったノートを見ても落ち込まないでください。筆者も、そういうところからスタートしたからです。
高難度の学習ですが、これまで3語しか聞き取れなかったものが6語に変わるだけでも成長を感じられるので、折れずにがんばってみてください。
教材選びの注意点
リスニング用の教材は、スラスラ読める文章を用意すると丁度いい負荷がかかります。
教材選びの注意点について気になるのであれば、こちらの教材選びについての記事をご参考ください。とにかく、難しすぎる教材は選ばないようにすることを心がけておけば問題ありません。
読み物が望ましい
難易度を調整することさえクリアできていれば、動画を利用しても音楽を利用しても構いません。興味のある教材を用いる方が、学習に対するモチベーションは上がることでしょうし、それで外国語を習得した人も多数います。
しかし、可能な限り小説を用いる方が望ましいです。よほど意識できる人であれば問題ないのですが、大抵の場合、コンテンツの視聴を楽しんで終わってしまうためです。
気になる表現や単語を辞書で引いている時間の方が長くなる内に、物語の先が気になってしまうのが普通です。
また、視覚情報に頼ることができるので、話者の表情や仕草のような情報からも会話内容が理解できてしまう場合があります。
きっと、筆者自身も動画を教材として使っていたら、なんとなく流して楽しんで「あ~、しまったなあ~」なんて思っているはずです。
音楽を利用すれば解決するかもしれませんが、教材に適した音楽とそうでない音楽があります。
音楽は、あまりにも速度が早いものがあったり、省略があったり、音韻や構成の都合で倒置表現が用いられていたりします。
音楽をずっと聞いて歌詞を読み解いたことで英語力が飛躍的に向上した学習者も少なからずいますし出会ったこともあります。しかし、多くの場合は、初学者には難しい可能性が高いです。
一方で、小説、とくにレベル別リーダーズを利用すると、自分の興味関心に沿って学習できるだけでなく、難易度もコントロールしながら学習を進められます。
さらには、視覚に頼ることなく文面から状況を想像することになるので、英文そのものにも集中しやすくなることに利点があります。
つまり、簡単過ぎるくらいの教材を選んでおけば、お話を楽しみながら、適度な負荷を適切にかけやすくなるわけです。