リーディング学習のコツ

語を勉強している人であれば「英語で書かれた本に挑戦したい」と考えたことがあるのではないでしょうか。

思い立ったが吉日、書店や通販サイトで本を買い、期待に胸を膨らませてページをめくったものの「あれ…読めない…こんなはずでは…」という経験をした人は少なくないはずです。

また、この記事にたどり着いたのが受験生であれば、過去問の長文読解に苦労している人もいるかもしれません。今回の記事が、そういった挫折を味わったことのある英語学習者の一助となることを願っています。

辞書を用意する

外国語学習に辞書を全く使用しないのは乱暴な考えです。英単語学習、英熟語学習、文法の学習でも辞書は、ある程度の目星をつけながら、どんどん引く癖をつけてください。

新出語や言い回しを前後関係で推測させるために辞書を使用させないという指導方法に出会ったことがあるのですが、コミュニケーションは瞬間的に行われる性質のものです。数十秒、数分と考えても分からない場合は、辞書を参考にしながら考える方が良いです。

最初こそは面倒に感じることと思いますが、慣れてくると調べる頻度は減っていくはずです。

辞書についての話は稿を改めますが、基本的には何を使用しても構いません。ただし、本格的に英語の勉強を考えている方々には、小学館の『ランダムハウス英和大辞典』を薦めています。

とくに調べたわけではないのですが、体感、用例の誤りが最も少ないと思います。比較的、古い単語や語義も収録されており、古典を読む際には重宝することと思います。

また、語源も載せてくれているので、単語学習にも適しています。iOSを使用していれば、アプリ版もあるので、積極的に活用してみてください。

あまりお金をかけられないのであれば、オンラインで使える無料の辞典を、スマートフォンのホーム画面に登録しておくと便利かもしれません。

例文や類語などの検索も視覚的に分かりやすく、発音も聞ける利点があります。下に画面を移動させれば、フレーズなども一覧でまとめてくれています。こちらも積極的に使ってみましょう。

本の選び方

基礎的な文法学習の後で

書籍(いわゆる長文)は「文」がたくさん織り込まれているものです。早く読めるようになりたい気持ちはよく分かりますが、基本を押さえられていないと文字を追いかけるだけで終わってしまいます。

今まで英語を勉強していたわけではなかったり、勉強内容を忘れてしまっていたりするのであれば、慌てずに基礎的な文法の学習から始めることを勧めています。

上の記事を参考に、自分の背丈に合う本を1冊取り組んでみてください。まずは、1文レベルが読めるようにしましょう(詳細: https://eigogakuto.com/grammar_learning/

見開き5語の法則

意外にも盲点となっていることなのですが、リーディング学習にも適切な負荷をかけなければなりません。難しすぎてもダメですし、簡単すぎても積み上がりません。それが見開き5語の法則です(筆者命名)

この法則は、ページを開いてみて、1ページにつき、分からない単語が5つ以上ある本は避けるように…というものです。分からない単語が多いと、読むことよりも単語を調べることに気を取られてしまい、一方、分からない単語が全くないくらいのものを選ぶとリーディングの勉強にはなるのですが、新しい単語に出会う機会が減ってしまいます。

もちろん、学習を制限しているわけではありません。どうしても読みたい本であるというなら挑戦してよいと思います。しかし、いきなりポーやメルヴィルに手を出しても、本を買ったという事実だけが残ってしまうことでしょう。

ここは気持ちをグッと抑えて、少しずつ積み上げるのが望ましいと考えます。以下の項目を参考に、読書を楽しんでみてください。

色々な教材

検定教科書

一般的に「学校で習う英語は意味がない」や「諸外国と比べて日本の英語教育は劣っている」といった論が何十年も前から広まっています。かくいう筆者も部分的には賛同しているのですが、誤った認識も少なからずある印象を受けます。その1つに「教科書に対する誤解」が挙げられます。

教科書は、学校で使われるものであったことから、あまり良い思い出のない人が多いのかもしれません。「定期考査のために勉強するもの」という意識が強いせいか、授業の外に出られない勉強になってしまう傾向があります。

教員からしてみても、何を学ばせたいのかが不明瞭で扱いにくいものも中にはありましたし、選りすぐりの専門家たちが時間をかけて編集しているにもかかわらず、なにかと悪者のように扱われているのが、この検定教科書です。

しかし、使い方にさえ気を付ければ、最も身近な教材となり得る存在でもあります。その使い方とは「音」を利用することです。こちらのリスニング学習の記事で詳しく述べていますが、授業で習った文章を「音読」したり「和訳」したり「ディクテーション(=音を聞きながら文字を書き起こすこと)」したり、自分なりに工夫して勉強してみることです。

日頃から、このように勉強していれば、いつの間にか試験範囲の内容や重要フレーズは頭に入ってしまいますし、これらを応用すれば、過去問の英作文やリスニング試験の対策もできるはずです。これらは、取りも直さず別の英文を読むための土台を築くことに繋がります。

レベル別リーダーズ

ある程度、教科書や大学入試の過去問を読めるのであれば、レベル別リーダーズ(Graded Readers)の利用を検討してみてください。

これは、英語圏で親しまれている(文学)作品を、英語学習者向けに平易な表現で書き直してくれているもので、原書が難しすぎて読めない人などを対象に編集されている本です。以下にその所感をまとめておきましたので参考にしてください。

もちろん、これら以外にも、自分の手にとって読みやすいと感じたものであれば、何を使用していただいても結構です。

  • Penguin Readers:CD付き、種類も豊富
  • Cambridge English Readers:ミステリー系が充実している印象
  • Macmillan Readers:出版社オリジナルの作品が充実している印象
  • Oxford Bookworm :古典名作が多い。英米文学科学生に役立ちそう。

筆者も、過去、このタイプの本にお世話になりました。大学生の頃の休暇中は、アルバイトかディクテーションかの二択しかなかった時もありました。

今でも、The Adventures of Sherlock Holmes を見かけると、The Speckled Band の冒頭のフレーズが脳裏をよぎります。自分の気になる本を選んで取り組んでみてください。

バイリンガル本

“bilingual” と書かれてある通り、2つの言語が1冊に収録されている本です。日本であれば、多くの場合、日本語と別の言語(英語)で書かれています。

最近、この手の本を書店で見かけるようになった気がします。単に学習対象の言語とそれに対応する日本語が書かれてある本だけでなく、古典名作に解説を交えながら読んでみる本や、そういった文学作品を通して文法を学習する本など、種類は豊富です

比較的、上級者向けに書かれてあるものが多いですが、英語が好きであれば、幅広い方々が読んで楽しめるようにもなっているはずです。

児童文学

本格的に英語の本を読みたい場合、まずは児童文学から入ってみるのも検討してみてください。ページをめくってみると、子ども向けの本とはいえ侮れないことが分かります。おそらく大学生でも、小学校高学年向けのものが難しく感じることと思います。

例えば、Charlie and The Chocolate Factory(チャーリーとチョコレート工場)でお馴染みの Roald Dahl(ロアルド・ダール)は、ディテール癖が強く、彼の作品は正確に読もうと思うと難しいかもしれません。

また、The John Newbery Medalニューベリー賞)受賞作品の1つである The GIVER(ロイス・ローリー [Lois Lowry] 著)という作品は、日本であれば、とても小学生が読むような内容の本でないように感じることでしょう。大人が読んでも楽しめる本になっているはずです。

ミステリー小説

英語学習を目的に小説を読むのであれば、ミステリー小説を薦めています。きちんと物語を追えなければ、何が原因で何が起きたのかが分からないからです

また、きちんと物語を追いかけることができれば、展開を予想する楽しみも生まれます。そのためには、過去、現在、未来と時系列の整理もできなければなりませんし、文字通りの意味だけでなく、言葉の裏に隠された意味や比喩表現にも敏感に反応できなければなりません。

さらに、一度読み終わった後で「伏線」について考える楽しみもあります。過去、ダールの短編を1つ授業で扱ったことがありますが、登場人物の名前が物語の結末を表していたり、タイトルから推測される「二重語」も発見できたりすると面白いです。

日常会話で使えるフレーズなど、たくさん学習の要素が備わっています。以上のことから、小説を読んでみたいけど何を読もうか考えているのであれば、ミステリー小説を薦めます。

短編小説

学習目的で長篇小説を読もうとなると飽きが来やすいように思います。筆者のように、本を読むことが好きであれば無問題なのですが、終わりの見えない物語を読むことが苦手である場合もあるでしょう。そういった人には短篇小説を薦めています。

短篇小説は、短くまとまっている分、丁寧に読むのに向いています。比較的、学習計画も立てやすいはずなので、友人を誘っての読書会も良いでしょう。

ミステリー小説の短篇集をみんなで持ち寄って知的な集会を開いてみてください。きっと、充実した時間となるはずです。

小説以外でも良い

もちろん、小説以外でも興味のある本であれば何を読んでも良いです。筆者は哲学や科学系の本を読むことが多いのですが、生物系でも宇宙系でも何でも良いと思います。

ここ数年で言うと、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の三部作は、英語表現がとても面白く、英語学習に加え、教養を深めるためにも向いているように感じました。高校生には難しかったかもしれませんが、授業で扱いたかったくらいです。

さて、色々紹介しましたが、全てを読み切ることができなくても落ち込まないでください。日本語でも途中で投げ出してしまう本があるくらいなので、気長に楽しんでもらえればと思います。面白かった本があれば、当サイトでも紹介していきたいですね。

英英辞典

英英辞典を読むことも英語力の向上に良いです。ただし、自分の知らない英単語の項目を読むのではなく、自分の既に知っている単語の項目を読むことがコツです。

少々手間なのですが、複数の辞書に当たると面白い発見が期待できることでしょう。個人的にオススメなのが、子ども向けの辞書を読むことです。

英語圏の10歳くらいの子どもたちが使用する辞書でさえ、大人が舌を巻くような語が収録されているはずです。例えば、高等学校で学習すると位置づけられている “obvious” でさえも、10歳未満が知っている語なのです。

学術雑誌など、他

学術雑誌や新聞記事なども英語学習の教材になり得ます。日本で取り上げられているニュースが世界ではどのように報道されているのか…など、多角的な視点から時事問題にアプローチできます。

特に、nature のバックナンバーはインターネット上であれば無料で記事を読むことができますし、記事によってはPDFファイルでの保存も可能です。興味のある分野を探して読んでみるのはいかがでしょうか。

目的に応じて読み方を変える

精読

キッチリと正確に読めるようになりたいのであれば、精読を薦めます。単純に、読めないものを読めるようにするという考えで取り組むと良いです。その際、できる限り左から右へ(前から順番に)訳を案出することを心がけましょう。

また、書籍だけでなく、色々な英文に対してアンテナを張っておくと良いかと思います。この場合、先に述べた「辞書の使い方」には注意して、がんばってみてください。

単語だけでなく、文法的に読めない部分も出てくるはずですが、乗り越えれば1つ成長です。一歩一歩、気長にやりましょう。

速読

速く正確に読めるようになりたいのであれば、言うまでもなく、時間を意識して読む練習をしなければなりません。

速読の練習の場合は、辞書を引かずとも全ての文が理解できる教材を準備すると良いです。速く読むこと以外の負荷を可能な限り減らし、速読に集中できるようにするためです。

まずは1分間に80語~100語くらいを目指してがんばってみてください。

多読のススメ

外国語の習得には、膨大な量のインプットを要します。その量に支えられてアウトプットが生まれると言っても過言ではありません。

無闇矢鱈に読めば良いというものでもありませんが、精読や速読の双方を取り入れながら、たくさんの英文を読み込んでください。

コツは楽しむことです。先述した教材の選び方を参考にがんばりましょう。

音読のススメ

英文がきちんと読めるようになっていることを前提に、音読も取り入れてみましょう。使う教材としては、速読で使用するくらいのレベルが望ましいです

これも、発音と文章の理解に意識を集中できるようにするためです。この場合は、難しすぎる教材を選ばないように、簡単過ぎる教材を選ぶように心がけてください。

また、音読の際は必ず「英語の発音」を意識してください。その理由は、単語学習の記事で紹介したとおりです。

要約

区切りの良いところで要点をまとめながら読むことも効果的です。1章ずつ読んだり、短い文章なら段落ごとにまとめてみたりすると良いでしょう。

これは、英語学習というよりも専門書や論文(論説)を読む時などにも役立つはずです。

どんな読み方になろうとも、教材の選び方には注意です

筆者
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